「高望みしてるつもりはないんです。普通の人でいいんです」——婚活相談で、この言葉を何百回聞いてきたかわからない。12年間で4,000名以上をサポートしてきた筆者の実感として、この「普通でいい」が婚活を一番難しくしている。
なぜか。答えはシンプルで、あなたの「普通」は普通じゃないからだ。この記事では、条件を数字に変換して検証していく。数字で見ましょう、そこからしか始まらないので。
「普通の男性」の条件を書き出すと何が起きるか
相談に来る女性会員に「普通ってどんな人ですか?」と聞くと、だいたいこう返ってくる。
年収500万円以上。大卒。身長170cm以上。正社員。年齢は30代。清潔感がある。タバコを吸わない。ひとつひとつは確かに「普通」に見える条件ばかりだ。
ところが、これを統計データに当てはめて掛け算すると景色が一変する。国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」によれば、30代男性で年収500万円以上は約39%。文部科学省の学校基本調査から大卒以上の割合は約55%。厚生労働省の国民健康・栄養調査では身長170cm以上の男性は約59%。総務省の労働力調査から正社員比率は約71%。国勢調査(2020年)の30代男性未婚率は約47%。
ここまでの5条件を掛け合わせてみる。0.39 × 0.55 × 0.59 × 0.71 × 0.47 ≒ 0.042、つまり約4.2%だ。
さらに「非喫煙者」(JT全国喫煙者率調査2024で30代男性の非喫煙率は約73%)を加えると、約3.1%まで落ちる。あなたが「普通」と思っている男性は、30代未婚男性の上位3%にしかいない。
条件の掛け算が起こす「見えない高望み」
ここで大事なのは、あなたが高望みしている自覚がないことだ。年収500万円だけなら39%。大卒だけなら55%。どれも「半数近くはいる」と感じられる数字で、贅沢を言っている感覚がまるでない。
でも掛け算は容赦がない。
筆者はこれを「条件の掛け算トラップ」と呼んでいる。相談者に電卓を渡して一緒に計算してもらうと、ほぼ全員が黙る。「え、3%?」と。そう、3%だ。100人の婚活パーティーに行っても、あなたの「普通」に該当する男性は2〜3人しかいない計算になる。しかもその2〜3人は他の女性からも人気が集中するから、実際にマッチングできる確率はさらに低い。
結婚相談所で新人カウンセラーだった頃、筆者は相談者に「焦らなくていいですよ」とだけ伝え続けた時期がある。その結果、20代女性会員を3年も停滞させてしまった。以来、「待つ」を許可するのをやめた。条件を可視化し、期限を切り、行動量を設計する。このやり方に変えてから、早期成婚率が3割から7割に跳ね上がった。
条件を1つ緩めるだけで対象者は何倍になるか
朗報もある。掛け算は逆方向にも効く。
たとえば年収の条件を500万円以上から400万円以上に変えるとどうなるか。国税庁の同調査では、30代男性で年収400万円以上は約56%。先ほどの39%から56%に変わるだけで、最終的な対象者は約4.2%→約6.0%に増える。1.4倍だ。
身長170cmを165cmに緩めると、該当率は59%→約80%に上がり、最終的な対象者は約5.7%になる。さらに学歴を「大卒以上」から「専門・短大卒以上」にすれば割合は55%→約72%に広がり、対象者は約7.5%になる。
たった3つの条件を少し動かすだけで、3.1%が7.5%になった。対象者が2.4倍に増えている。
これは段取りの問題です。「妥協」じゃない。優先順位をつけて、本当に譲れない条件と「あったらいいな」を分ける作業だ。
「条件」と「相性」を混同していないか
もうひとつ、相談現場でよく見る落とし穴がある。条件一致を相性と勘違いするパターンだ。
年収も学歴も身長もクリアしている男性と会ったのに「なんかピンとこない」と断る。逆に条件外の男性に会ってみたら話が弾んだのに、「でも年収が……」と自分でブレーキをかける。IBJ成婚白書2024年度版のデータでは、成婚者の約4割が当初の希望条件とは異なる相手と成婚している。つまり条件で絞りすぎると、相性の良い相手を最初の検索画面で弾いてしまう。
以前担当した34歳の女性会員は、過去2年で5名と交際し全員と破局していた。原因を数字で振り返ったところ、全員が希望条件にぴったり合致する男性だった。条件は完璧なのに、交際中の行動パターンに問題があることが見えてきた。「同じパターンで断る癖」を修正した結果、次の交際相手——実は年収の条件を少し下回っていた——と3ヶ月で真剣交際に進み、6ヶ月で成婚した。感覚は嘘をつくが、数字は嘘をつかない。
今日からできる「条件の棚卸し」3ステップ
では具体的に何をすればいいか。筆者が相談者全員にやってもらっている3ステップを紹介する。
ステップ1:条件を全部書き出す
まず紙やスマホのメモに、相手に求める条件を全部書く。「こんなの当たり前でしょ」と思うものも含めて全部だ。10個以上出る人も珍しくない。
ステップ2:「MUST」と「WANT」に分ける
書き出した条件を「これがないと結婚生活が成り立たない(MUST)」と「あったら嬉しい(WANT)」の2つに分類する。MUSTは最大3つまで。それ以上あるなら、まだ本当の優先順位がついていない。
ステップ3:WANTを1つ外して検索してみる
結婚相談所やアプリの検索画面で、WANTの条件を1つずつ外して検索する。表示される人数の変化を見るだけでいい。まず期限を切りましょう——この棚卸しは今週中に終わらせる。来週やるつもりの人の9割はやらない。
ロードバイクに乗っていると実感するのだけれど、最初の5kmが一番きつい。10kmを超えると身体が温まって気づけば50km走り切っている。婚活も同じで、条件の棚卸しという最初の5kmを走り出すのが一番しんどい。でも、そこを超えれば景色が変わる。
FAQ
条件を緩めたら妥協した結婚になりませんか?
条件の緩和は「妥協」ではなく「優先順位の整理」です。IBJ成婚白書2024年度版では、成婚者の約4割が当初の希望条件外の相手と結婚しており、結婚満足度が低いというデータはありません。むしろ条件を絞りすぎて出会い自体がゼロになるほうがリスクです。
年収の条件だけは下げたくないのですが……
年収をMUSTに置くこと自体は問題ありません。ただし、年収をMUSTにするなら他の条件(身長・学歴・年齢幅など)をWANTに移す判断が必要です。すべてをMUSTにすると対象者が数%になる、という構造を理解した上で選んでください。
条件の掛け算は男性側にも当てはまりますか?
もちろん当てはまります。「25歳以下・料理好き・細身・家庭的・自分より年収が低い」など、男性も無自覚に条件を積み上げているケースは多いです。性別を問わず、条件は掛け算で効いてきます。
何個まで条件を持っていいですか?
検索条件としてセットするのは3〜5個が現実的なラインです。ただし「絶対に譲れないMUST」は3個以内に絞りましょう。MUSTが4個以上ある場合、対象者がほぼいなくなる掛け算トラップにはまります。
条件を見直しても出会えない場合はどうすればいいですか?
条件以外に「行動量」の問題がある可能性が高いです。IBJ成婚白書2024年度版によると、成婚者のお見合い申し込み数は途中退会者の1.5〜1.7倍。条件を適正化したうえで、週の申し込み件数を数字で決めて3ヶ月集中で動くことを推奨します。
参考文献
- 令和6年分 民間給与実態統計調査 — 国税庁, 2025年9月
- IBJ成婚白書 2024年度版 — 株式会社IBJ, 2025年4月
- 令和2年国勢調査 — 総務省統計局, 2021年
- 2024年全国喫煙者率調査 — 日本たばこ産業(JT), 2024年7月





